眠れる森のお姫様
「……すごい気持ちよさそうに寝てるなぁ」音楽室の長机に顔を伏せて寝ている彼女を見て思わず微笑んでしまう。
机の上には今まで練習していたであろう曲の楽譜が広げられていた。
その楽譜にはいろいろなメモ書きがされていて、
「ヴィオラの音をしっかり聞く」とか
「クレッシェンドを大事に」など、
書き込まれているメモをみるだけで、
一生懸命この曲に向き合っているのが一目でわかった。
初めて演奏を聴いたときは、ただ上手な子としか思わなかったのに。
彼女と一緒に演奏していくうちに、彼女の弾くヴァイオリンの音色にどんどん惹かれていった。
技術が誰よりも優れているかというわけでもない。
それでも、彼女の音色には温かみがあって、優しい気分になれる。
彼女の思いと共に変化するのだ。
彼女のヴァイオリンの音色は、彼女そのものを表した音。
そんな彼女のヴァイオリンの音色を聴くとファンになる人が多い。
普通科の中にも既に多くの彼女のファンがいるのを知っている。
ただし純粋な彼女の演奏のファンであればいいのだけれど
岡本のような輩もかなりいるわけで。
こんな場所で無防備に寝ているを見ると、本当に気が気でない。
「やれやれ……本当に君は無防備すぎる」
もしかしてわかってやっているのでは、なんて思うこともあるけれど、
日頃の彼女を見るとそんな疑念は吹き飛んでしまう。
行為のある男が近づいてきたって、その意味すらわかってないぐらい鈍感なのだから。
「そろそろ自覚してほしいんだけどね……どれだけ自分が可愛いか」
軽くため息をついた。
「ちゃん…大好きだ」
耳元で優しくささやく。
するとは軽く微笑むと口を開いた。
「…ん……大地せんぱ……」
君と出会うまでは、こんな感情が自分にもあるとは思いもしなかったけど。
誰かの言動でここまで幸せな気持ちになれるとは思わなかった。
榊は顔を赤らめて、そのまま寝ているのおでこにそっとキスをした。
「……いい夢を」
どうかまだ起きないで、
もう少しこのままで。
ーーーーーーーーーー音楽室の前にて。
「響也先輩。今日音楽室使えないみたいですよ」
「え、まじかよ。昨日は誰もそんなこと言ってなかったのに」
音楽室のドアには「本日防音工事のため、終日使用できません」という張り紙と、
不自然にかかった鍵。
この後、響也が嫌な予感を感じ、音楽室に忍び込んだのはまた別のお話。
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めっちゃ短くなりました……orz
まだエンディング間近なところです。
副部長という権限とかありとあらゆる手段を使って
いろんな男から主人公を守っていそうな。
嫉妬ネタ好きなんで、岡本イベントの時は
うきゃーとなっていました。
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