120cmの秘密











が東金と同棲を初めて1か月程が経ち、5月に入った頃だった。
を関西に迎える会』と題して東金とが同棲するマンションにて
土岐、芹沢、八木沢が集まり、の手料理を囲みながら2人の同棲生活開始をお祝いするパーティが開かれた。

「なー、ちゃん」
「はい?」
「なんで千秋なん?」
「え?」
「確かに、今ならまだ間に合うと思います」
「もう、芹沢君まで」
「こらこら、2人とも。千秋はこうみえて彼女にはすごく優しんだから」
「おい、ユキ…」

こんな感じでいつものようにワイワイと楽しい時間が過ぎていく。

ふと、はテーブルの飲みものが減っていることに気づき、1人キッチンへと向かった。
キッチンはアイランドキッチンになっていて、キッチンとリビングが一つの部屋になっている。
そのため、どこにいてもリビングにいる全員の顔が見れるし声もよく聞こえる。

「なぁ千秋、一日でええからちゃん貸してくれへん?」
「冗談じゃない、誰が貸すか」

そんな彼ららしいやり取りを背中ごしに聞いて、微笑ましいなと思いながらは冷蔵庫を開けた。

「んー、炭酸水とノンアルコールカクテルでいいかな?」

冷蔵庫にあった飲み物の中からいくつか選んでとり出し、腕で抱え込んで冷蔵庫の扉を閉めた時だった。
突然、後ろから声をかけられる。

さん、その飲み物お持ちしますよ」

そういって、手を差し伸べてくれたのは八木沢だった。
が重そうに抱えていたジュースを全て受け取り、八木沢はいつもの優しい笑顔を見せた。

さんが関西の大学を受けるって聞いたときは驚きましたけど、受かった後に
千秋と一緒に住むって聞いた時はさらに驚きました。…でも、2人とも幸せそうで本当に良かったです」

八木沢は至誠館を卒業後、実家を離れて経営学を学ぶため関東の大学に進学した。
そのため、東金との遠距離恋愛が始まってからは、東金の幼馴染ということもあり
よく恋愛相談にのってくれて、2人のすれ違いで喧嘩があった時はいつも2人の間を取り持ってくれていた。

東金もも八木沢にはとても感謝していて、時折今日のように八木沢を関西に招いては一緒に食事をしている。
幼馴染の二人の絆は、が2人と出会ったとき以上に深まっているように見えた。

「あ、そうだ。引っ越しお祝いを兼ねて、1ついいことを教えてあげましょうか?」
「え、なんですか??」

八木沢はにこっと微笑んで、耳を貸してくださいと小さな声で言った。
は耳を彼の口元にそっと寄せる。

そして2人以外誰にも聞かれないような声で秘密の話を教えてもらうと、
それは予想をしていなかった話で、は嬉しくなると同時に顔を赤くした。

そんなの表情に八木沢は満足したのか「先に戻ってますね」と言って
そのまま飲み物を持って東金達のいる場所へと戻っていった。

も動揺していた心を落ち着かせるために一度大きな深呼吸をして、そのあとを追いかけたのだった。

























「じゃあ、気をつけて帰れよ」

楽しかった時間はあっという間に過ぎて、全員が帰宅する時間になった。
東金とは彼らを見送るため玄関の前で手をふって、全員が見えなくなったのを確認すると玄関のドアを閉めた。
は一足先に後片付けをしようと、リビングに戻ろうとしたが突然後ろから抱きしめられて身動きができなくなる。

「えっ」

東金はを後ろから覆いかぶさるようにだきしめて、の首筋に痕をつけるようなキスを何度も落としていく。

「っ!?」

突然の出来事にびくっと身体をこわばらせたまま、その現状を受け止めていたが
今度は抱きしめていた腕の力が弱まり、東金の手は服の上からの身体を弄り始めた。

「東金さ……んっ!」

手はお腹や胸、そして太ももなどが弱い場所ばかりに触れてきて。
その手の動きは激しくなる一方で止まる気配がない。

「…なぁ、さっきユキと何仲良く喋ってたんだ?」
「え?」

どうやら、先ほどのパーティの途中で八木沢と話していたことを見られていたようだ。

ーーーーもしかして、嫉妬?

いつもより強引な理由がわかったものの、その誤解をとくことすら許されずに
今度は口をふさがれて、深いキスを落とされる。

「……んんっ!」

そして何度も激しいキスを落とされながら、
器用に洋服を脱がされてしまい、はショーツ一枚となってひんやりとした空気が体を包み込んだ。
この状況に、は恥ずかしくて下を向くも、そんな彼女の顎を掴んで無理やり顔をあげさせる東金。

「顔みせろよ」
「あ…っ、やだっ…!」

鏡を見るように無理やり顔を向かせられると、目の前には自分と彼の姿が見える。
玄関の鏡に映るのはあらわな姿をしている自分と、後ろから抱きしめている東金。
まるで獣のように本能のまま、体を愛撫する彼に頭の中がボーっとしてきて溶けてしまいそうだった。

「へぇ、こういうのも感じるんだな」
「ちがっ…!」
「違うって?こんな目を潤ませて顔を赤らめて…俺が欲しいって言ってるようにしか見えないぜ?」

意地悪く耳元で囁かれると、今度は指がショーツの隙間から入り込み、の濡れそぼったそこをなぞった。

「ひぁっ…っ!」
「ほら、いつもより感じてるじゃねーか」

そのまま指がの中に入り動き始める。
クチュクチュとイヤラシイ音を立てて、の思考は停止寸前だった。
2本目の指が入り、は声を抑えることができない。

「あっ、やっ……ぁっ…ぁっん!」

玄関で繰り広げられる情事に、最後の力を振り絞って抵抗しようとするも
力が入らず東金の腕に捕まって立っていることが精一杯。

「…嫌じゃないだろ?」

そしてまた、耳元で意地悪な言葉を囁かれたと思うと、突然体の中に入り込んでいた指が抜かれた。
先ほどまで与えられていた刺激が突然なくなって、は涙目になりながら東金の名前を呼び、縋るように見つめた。

「と…がねさ…っ」

その快感を受け入れ始めながらも、涙目で恥じらうの表情は
東金の理性を破壊するのには十分すぎるほどだった。

東金はいてもたってもいられなくなり、を両腕で優しく抱きかかえると
そのまま寝室に移動しベッドに横たわらせる。

そして、彼女の上に覆いかぶさると、キスを落として、彼女のショーツを脱がせ自身の服も脱ぎ愛しい彼女を見つめた。
は早く体に溜まっている熱をどうにかしたい一心で、手を伸ばして何度も東金の名前を呼ぶ。

「…とうが…ねさ…っ」
「…名前で呼べよ」

2人暮らしを始めて間もないころ、東金と小さな約束をした。

名前で呼ぶこと。

約束をしてからまだ1か月。
恥ずかしいのと、なかなか慣れないというので、名前で呼ぶことはまだ少なかったが
は精一杯の声でその名前を呼ぶ。

「千秋さ…ん、おねが…いっだから…っ」

彼女からのお願いに、東金も既に余裕はなくなっていた。

何度抱きしめても。
何度体を合わせても。
胸の高鳴はおさまることを知らずに、いつも以上に大きく響いていて、全身が彼女を欲していた。

…入れるぞ」

そういって、優しくゆっくりと入ってくる東金自身に、は伸ばした腕を彼の大きな背中に回した。
奥まで達すると、ゆっくりと動き始めるものの、余裕がない東金はすぐに激しく出し入れをする。
はその与えられる刺激に身を任せた。

「あっ……んあっ!ち…あきさ…っ!」
「…くっ」

二人のつながった場所から卑猥な音が響いて、さらに快感を増幅し二人の限界は近かった。

何度も激しく腰を打ちつけられてはただ目の前の快楽に溺れていく。

「ぁふ…、も…っいっちゃう!」
「…っあぁ、いけよ」
「ぁ…っあっああっ!!」
「…っく!」

そして、ほぼ同時に二人は絶頂を迎えて、はそのまま東金の腕の中で意識を手放した。
東金もそのままにもたれかかるようにしてどさりと倒れかかった。





















「ん…」

薄暗い部屋の中、は東金の腕の中で目を覚ました。
目を覚ましたもののしばらくぼーっとしていたは、頭を撫でられているのに気づくとその手の先をゆっくりと見つめる。
すると東金もが目が覚めたのに気づき、彼女のおでこに優しいキスを落とした。

「……無理させて悪かった」

いつもよりも強引に情事を行ったことに反省し、少し落ち込んでいる東金をみて
はそんな彼を愛おしく思い、少し笑ってしまう。

「じゃぁ、明日ヴァイオリンの練習に付き合ってくれるなら許してあげます」

そんな、らしいお願いに東金も笑った。

「仕方ない、付き合ってやるさ。じゃぁ、お前も明日の夕方にあるライブのミーティングに付き合えよ」
「なんか、いつの間にかプラマイゼロになってる気が…」

笑う東金に、も一緒になって笑った。

「あ、そういえば千秋さん。さっき八木沢さんが教えてくれたことなんですが……」
「あぁ、ユキから耳打ちされた後、お前がなんかにやにや顔してたやつか?」
「う…にやにやしてましたけど!」

あの時のやりとりが見られていたと思うと恥ずかしいと思いながらは言葉をつづけた。

「実は、千秋さんが一人暮らしの時からずっと使ってるこのセミダブルベッドを
買い換えない理由を教えてくれたんです」
「なっ…!?」

その言葉に東金は目を丸くして驚いた。

「私がここに来る前にほとんどの家具はいろいろ買い換えてあったのに、このベッドだけは変わらなくて
なんでだろうって前に八木沢さんに話したことがあって。それを覚えててくれて、さっき教えてくれました。」

は満面の笑みを浮かべている。

「このぐらいのサイズじゃないと、二人でくっついて眠れないからなんですね」

バツの悪そうな顔で小さなため息をつく東金は、突然ぐるんとに背中を向けた。

「あれ、照れてます?」
「……うるさい。いいから、早く寝ろ。明日ヴァイオリンの練習するんだろうが」

照れ隠しのようにふてくされるように言う東金を愛おしく思い、
は顔を緩ませると目の前にあるその大きな背中にぴたっとくっついた。
顔は見えないけれど、くっついていれば鼓動の速さがわかるから。

「おやすみなさい、千秋さん」

はそういうと幸せそうに微笑んで目を閉じた。
しばらくすると小さく寝息を立て始めた彼女に、東金はまた小さなため息をついた。

「……ったく、ユキ覚えてろよ」

小さくつぶやいた言葉は誰に届くわけでもなく暗闇の中に消えて行く。
それでも温かいぬくもりは2人を繋いで消えることなく夜が明けるまで残っていた。















君と2人の距離は
いつも温もりを感じられる120cm以内で









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妄想で両親へのあいさつ編とか、いろいろ番外編のネタを思いついて書き留めていて
このセミダブルベッドのネタを書いていたら、18禁になりました。。。orz
定番ネタですいません。

それにしても、私が書く東金には
超合金よりも硬い理性を持たせられなくて残念です。。。^^;



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