星の瞬く夜に




キラキラと 星が瞬いている
こんな夜だから












「ん・・・」

東金は畳の上に横になって眠っている彼女の頭を撫でた。
その指の感触には身じろぎをして東金に近寄ってくる。
火照って少し赤くなった体が浴衣の隙間から見えその艶やかさに東金はドキッとした。

先に風呂に入ってくると言ってから、えらい長風呂だなと思って待っていたら
案の定戻ってきたときにはのぼせていて。

おそらく原因は部屋についている露天風呂の話をした時から、妙に意識しはじめたのが原因だろう。
そんなところもかわいいと思ってしまう俺もそろそろ重症な気がする。

ふらふらとした足取りでも、大丈夫と言い張るから、無理やり座っていた俺の隣へ横にならせた。
するとつめたい畳の感触に気持ち良かったのか、俺の服の袖をつかみながら寝息を立て寝てしまった。

そんな彼女をみて東金は顔を緩ませた。

俺の周りには今までいなかった人種。
おそらく世界中どこを探し回っても、彼女以外いないんだろう。

地味なくせに、ヴァイオリンを弾く時だけは誰よりもキラキラしていて
間抜けで抜けているくせに 真の強さがあって負けず嫌い
ヴァイオリンのことになると周りが見えなくなるぐらい一生懸命になって

嫌がらせにも全く動じないで反抗するかと思いきや
ふわふわしていて危なっかしくて 見てられない時があって
そして、誰かのために自分を犠牲にしてもかまわないような優しさや強さをもっていて

彼女はどういう人物かと言われれば、きりがないぐらい出てきて説明が難しい。

最初はただのぺんぺん草だと思っていたのに
いつの間にかその雑草は
バラやひまわり、タンポポやさまざまな花々に変化して

気づけば一つ一つの表情や言動がどれもキラキラしていて愛おしくなり
目が離せなくなっていて 恋に堕ちていた

「ったく・・風邪ひくぞ」

の体をそっと抱き上げて、すでに敷かれている布団に横にならせて掛布団をかけた。

こんな風に誰かに尽くしている自分に苦笑する。

風邪をひかないか心配したり、布団まで運んで掛布団をかけるとか子守みたいなことを
自分が誰かのためにここまでやるなんて思いもしなかったから。

「俺にここまでやらせるのは、お前ぐらいだな」

















「ん・・・」

月明りに照らされる中、布団にくるまっていたは目が覚めた。
そして、目を開けるとすぐ目の前に東金の顔が。

「っ!?」

顔を真っ赤にしてすぐに離れようとするが、体が東金の腕に抱きしめられたまま動けない。
寝息も感じれるぐらいの距離に、緊張して息が苦しくなった。

ドキドキが止まらなくて、どうにかして離れようとするも
東金の腕がそれを許さなかった。

あまり動いても東金を起こしてしまうかもしれない。
そう思って深呼吸をしながらじっとするも、目の前の彼に目を奪われてしまう。

月明りに照らされていて、すごくきれいで。

王子様とはこういう人のことを言うんだろう。
なんて思ってしまうぐらい綺麗な寝顔だった。

じっと見つめていると、東金の目がゆっくりと開いた。
まだ寝ぼけているのか、はっきりと焦点はあっていない。

「ん・・・・・」

優しく名前を呼ばれたかと思うと、さらに抱き寄せられて、おでことおでこが触れる距離まで近づく。
そして、そのままキスを。

「・・・・愛してる」

そういって東金はまた重たそうだった瞼を閉じた。

「・・・・っ」

寝ぼけていたのか、今となってはわからないが、
運よく東金の腕の力が緩んだため、は顔を真っ赤にしたままそっと起き上がった。

どきどきと鼓動が高鳴って、体温が上昇していくのがわかる。
うるさくて、彼に聞こえているのではないかと思うぐらいに。

どうにかして落ちつこうと半纏を羽織り月明りを辿るように、ベランダに向かった。







まだ1月3日だからか、ツンと冷たい風が頬を突き刺した。

でも冬の空気は好きだ。
とても澄んだ空気だから。

しかも今夜は満月で、
そのまわりには星がキラキラと瞬いていた。

「もう寝れないよ・・・」

なかなか落ち着かない動悸に、は小さなため息をついた。

ジルベスタ―コンサートの後に彼から告白されて、まだ数日しかたっていないのに
この先自分の心臓は東金から与えられるときめきに耐えられるのだろうか、と心配になる。

私だけがこんなに動揺して、子供っぽいなぁと思いながらも
それでも東金と恋人になれたことに幸せを感じる。

ふと目についたのは露天風呂。
は冷たくなってきた足をその湯船にいれて、浴衣が濡れないように座った。

「あったかくて気持ちい〜」

足先からじんわり温まっていく。
顔は相変わらず火照っているけれど、寒空の下だからかちょうどよかった。
そして、そのまま空を見上げた。

満月や星がキラキラと笑っているように見える。

なんて幸せなんだろう。
そう思うと、つい鼻歌が漏れてしまう。

『いつか王子様が』

小さいころから白雪姫が好きで
ヴァイオリンで何回も弾いていた大好きな曲。

彼も好きだと知って、うれしくなってジルベスタ―の曲目にいれた。
その曲目を見て、嬉しそうに笑ってくれたのを覚えている。

王子様は現れるんだなぁ・・・

綺麗な星がきらきらと瞬いて、まるで今の私の心情を表しているようだった。






















「ん・・・?」

ぬくもりがなくなって少し肌寒くなっていたためか目が覚める。
腕の中にいるはずのがいつの間にかいなくなっていることに気づく。

そのぬくもりがないことで、今までのことがまるで夢だったかのようで。
不安な気持ちの中、を探すように部屋を見渡しながら体を起こした。

ふと、ふすまから差し込む月明りに目を奪われる。

「まさか・・・な」

その月明りを辿ってベランダへ向かうと
そこには露天風呂に足を入れながら、空を見上げて呑気に鼻歌を歌う彼女がいた。

真冬の空の下、月明りに照らされる彼女。
白い湯気もゆらゆら揺れて。
その姿が、幻想的で、目を奪われる。

そしてベランダに続くドアを静かに開けた。
聞こえてきたのは いつか王子様が の鼻歌。

ぎこちない旋律に少し笑いがこみ上げると、
彼女はその笑い声に気づき、鼻歌を止めて振り返った。

「あ、おこしちゃいました?」

申し訳なさそうにする

「ヴァイオリンはきれいなくせに、鼻歌は下手くそ」
「鼻歌は専門外なんでいいんです!」

そういってあどけなく笑う彼女。

東金はの隣に腰を落とすと、同じように湯船に足をいれる。

「すごいきれいですよ。満月と星が今にも降ってきそうで」

は指で空を指した。

振りかざした指先の向こうを見つめるとキラキラと星が瞬いて。
この広い世界に2人しかいないようなそんな感覚になる。

「何か願い事したら叶いそうですね」

そんな風に可愛く笑うから、東金は思わずの顎を掴んで自分の方へ引き寄せていた。

「お前はこれ以上何を願うんだ?」

これ以上の幸せはないだろう?とばかり意地悪く聞いてくる東金に、
は赤くなりながらも口を開いた。






『王子様が白雪姫を見つけてお城につれていき、いつか必ず幸せになる』

「いつか王子様が」の歌詞がふと頭に浮かんだ。
幸せが溢れ出した今でも願わずにはいられない。

多分白雪姫もきっと同じことを願うんだ。

「ずっと、ずっと一緒にいられますように、って」















こんな 星が瞬いた夜に
願うのは ただ一つ
あなたとの未来だけ











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コルダ4の東金の想い・想われ√クリアしてスペシャルのネタから。

東金スペシャル、付き合って3日目に旅館!!
リッチピーポーで突っ込みどころが満載でしたが、もうあれが普通だから慣れるしかないんだろうな

それにしても、私が下手なのか攻略がかなりシビアで結局
全イベントは埋まりませんでした。パラメータ調整難しいな・・・。
でも東金スペシャルは妄想が膨らんでよかったです。「超合金」には笑いました。



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