平均体温









屋上のドアを開けると、冷たい風が一瞬で体を包み込んだ。

雪が降り出した昼休み。
案の定屋上には誰もいない。

ふーっと息を吐くと、その息はすぐに白い息に変わって空へと溶けていく。

「これだけ寒ければ、誰もいないよね」

少しずつ積もり始めた雪の中、
誰もいない屋上の真ん中では空を見上げた。

幼いころから雪が好きで、特にひらひら舞い降りてくる雪を
下から見上げるのが大好きだった。

「すごく、綺麗だなぁ」

空を見上げたまま、目をそっと閉じる。




その時だった。
その心地いい静けさをやぶるように、突然屋上のドアが開く。

「ったく・・・」

大きなため息とともに、に向かって近づいてくる足音が聞こえる。

「あー、まじ寒っ・・・」

目を開けて、足音の方を振り返ると、そこには響也が不機嫌な顔をして立っていた。

「響也何してるの?そんなところで」

そのらしい少しとぼけた言葉を聞くと
響也は再度大きなため息をついた。

「お前こそ、くそ寒いこんなとこで何してるんだよ」

少し怒った口調だったが、その言葉とは裏腹に
そのままの頬を優しく両手で包み込んだ。

「・・・すげー冷えてるし」

冷たくなった頬に響也の温かい手が触れる。

温かくて気持ちがよくて。
響也の手の温かさが頬にうつり、体温をもらって1つになった感じがした。
それがうれしくてついほほ笑んでしまう。

「響也の手あったかいね」

そして、そのまま頬に触れている手の上に、は自分の手を重ねた。
重ねられた手も冷たくて、響也は苦笑した。

「このままだと本気で風邪ひくぞ」

あまりにも心配そうにいうから。
その幸せにくすぐったくなって。

「風邪ひいたら、響也にうつすから大丈夫」

ふと口から冗談がでてしまう。

「ったく、彼氏をもっといたわれっての」

そんな冗談にすかさず反応する響也。
そんないつものやりとりに、2人は目を合わせて笑った。

雪は降り始めたばかりで、まだ止みそうに無い。
は空を見ながら自分の白い息が昇っていくのを見つめた。





幼い頃からいつも同じ。
寒い日に一人で外に出ると、いつもすぐに私を探して見つけてくれて
「ばーか、風邪ひくぞ」って
すぐ傍で温かいぬくもりを分け与えてくれる響也が好きだった

冷たい私の手と、彼の温かい手
重ねると体温が一つになって
それがうれしくて


だからかな



冬が好きで
雪が大好きで






「どうした?」

響也が静かになったの顔を心配そうに覗き込んだ時、
は突然響也に抱き付いた。

「うおっ!」

突然のことで顔を赤くして、声が裏返る響也。
その様子に、は笑った。

「だって寒いんだもん」

耳まで赤くなった響也は再度大きなため息をつくも、
胸の中にいるの頭をなでて顔を緩ませた。

「ばーか、寒いから雪ふってんだろ。ほら」

教室戻るぞ。
そういって体を放した代わりに、差し出された優しくて大きな手。

「はーい」

はその手をとって響也に続いて歩き出した。

「ねぇ、響也」
「ん?」
「・・・もっと寒くなったら、もーっと温めてね?」

その言葉を聞くと響也はさらに顔を真っ赤にして、
今日何度目かになる大きなため息をついた。

「また、そういう爆弾発言・・・」

彼の手の温度も上がっていくけれど、私の手の温度も一緒に上がっていく。
どちらの体温が高いかなんて、今となってはわからないけれど。

「・・・そういうことは、俺以外には絶対言うなよ」

彼も私も、幸せだということは確かだ。










こんな寒い日には

二人の体温を分け合って













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響也の慰めEDをみて、慰めEDにちなんだ小説を書いていたら途中で
切なくなって甘い話を書きたくなって書きました。

ほんと思いつきでしかも季節外れですいません。
しかも響也バースデーネタもまだ書きあげてない・・・。

のんびり創作小説など増やしていけたらいいなーと思います。


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