理性と本能の狭間で






理性と本能の狭間で
天使と悪魔にささやかれ











ちゃん、せっかくの冬休みなのにわざわざ家に来てもらって申し訳ないね」
「いえ、私も宿題をしなきゃいけなかったのでちょうどよかったです」

冬休みも残すところあとわずか。
大地が受験を控えていることもあり、デートの代わりに大地の家で2人で勉強することになった。

は大地と付き合う前に誘った映画のことを気にしていて
冬休みも一度初詣に行ったきり大地の受験勉強に影響しないように
メールを一日に何回か送る程度で我慢をしていた。

大地は自分のことを気にかけてくれているを愛おしく思いつつも
彼女に会いたい気持ちが限界に達してしまい
一緒に勉強をしよう、という提案を行い家に呼び出したのだった。

ちゃんの宿題でわからなかったら、聞いてくれていいからね」
「ありがとうございます」

は大地に会えた嬉しさがあふれて思わず微笑んだ。
大地はそんな表情をみると、思わずにやけそうになるのを必死で抑えた。

床の上に組み立てた簡易テーブルに向かい合って座り、各々勉強を始めようと教科書を開く。
は教科書をじっと見つめて、問題を解き始めた。
大地も受験勉強を始めようとするが、目の前の彼女につい視線を移してしまいその姿をじっと見つめてしまう。

(かわいい…)

じっと見つめられていることに気づいたは、視線を大地の方へ移すと首をかしげる。

「…大地先輩、私の顔に何かついてますか?」

その仕草がかわいくて鼓動が早くなる。

「んー、宿題をする姿が可愛いなと思ってね」
「えっ…、…もうからかわないでください」

大地の言葉を聞くとは顔を真っ赤にさせて、抗議するかのように顔を膨らませた。

「うーん、ほんとのことを言っただけなんだけどな」
「もう、大地先輩はいつも冗談が多いんですから。ちゃんと受験勉強に集中してください」

ぴしっと彼女から指摘を受けるものの、真っ赤な顔の彼女に大地は笑った。

照れて恥ずかしくなったのか、は教科書を机に立てて顔を隠すように宿題を再開する。
そんな様子をみて大地は頬杖をついて幸せそうに顔を緩ませた。

密かに想いを寄せていた彼女に告白して見事に成功し付き合えることになって
まだ1週間もたっていない中でのこの状況は、幸せ以外の何ものでもない。
しかも、今日に限って大地の家族は受験勉強をしている大地を残して海外旅行へ行っており
家には飼い犬のモモ以外には可愛い彼女と二人だけ。

(…うーん、これは失敗したかもしれない)

大切にしたいと思う気持ちがある反面、
好きが溢れ出して自分でもうまくコントロールができなくて
今すぐにでも彼女の全てを自分のものにしたいという欲望がある。
現在その二つの気持ちの狭間で苦しんでいる状況で。

(…まずい、勉強どころじゃないな)

そろそろ本気でコントロールがきかなくなりそうで、大地は小さく息を吐いて立ち上がった。

「ケーキがあるから持ってくるよ。一緒に食べよう」
「ありがとうございます!」

今まで本気の恋なんてしたこともなかったからか、こんな感情は初めてで。
彼女の前ではいつだってかっこよくいたいのに、
理性が壊れかけている自分に辟易しながら、キッチンへ向かうため自分の部屋を後にした。
























気分を入れ替えて部屋に戻ってくると、順調に宿題を進めていたは大地に気づき笑顔を向けた。

「わぁ!おいしそうですね!」

大地が運んできたのはショートケーキが一つ。
そしてコーヒーが二つ。
ショートケーキとコーヒーをに渡すと、は申し訳なさそうな表情で大地を見る。

「大地先輩はいらないんですか?」
「俺はちゃんが食べてるのを見てるだけで十分だから」

甘いものがそんなに得意じゃないしね。
そういうと、そんな事情をしっているは素直にお礼をいって、目の前のケーキを食べはじめた。

「おいしいです!」

ぱぁっと笑顔をみせるに大地もつられて笑顔になった。

「ほんとに可愛いな」
「…もう、いくら褒めても何も出てきませんよ?」
「そうかな?」

大地はの口元についていた生クリームをそっと指でとり、そのまま自身の口の中に運んだ。

「おいしいクリームのおすそ分けはもらえたよ」

にこっとわらう大地に、顔を真っ赤にさせる
その表情に大地はくすっと笑った。

「…うー、そうやってすぐからかうんですから」
「からかってるわけじゃなくて、本気だよ」

好きだっていう気持ちも。
可愛いって思う気持ちも。
独占したいって思う気持ちも。
君の全てに触れたいと思う気持ちも。

全部、本当のことなのに。

相変わらず彼女は手厳しく冗談だと言い放つ。
どうやったらこの思いが伝わるんだろう。

「大地先輩…?」
ちゃん」

大地は立ち上がっての唇にキスを落とした。
優しいキスを何度か落とし、そのあとは深いキスを落として。

キスが深くなると、はもっていたフォークを落として、ぎゅっと大地の服を掴む。
くらくらと眩暈がするぐらい体が熱くなって。
そして、ドキドキと鼓動が早くなって。

「…んっ」

唇が離れると、はうるんだ目で大地を見上げた。
その表情に大地の鼓動もさらに高鳴って、好きという気持ちがさらに溢れ出す。

触れたくて、抱きしめたくて
その先に進みたい欲求が大きくなって。

「…ちゃんにこの思い、どうやったら伝わるのかな」

は大地に抱き寄せられると、バランスを崩してベッドの上へと落ちていく。
そして、彼女に覆いかぶさるようにして大地もベッドの上へ。






好きで、好きで。
伝えたい気持ちは、冗談なんかじゃなくて本気だ。










理性と本能の狭間で
先に天使が小さな声で俺にささやいた

『本当に伝えたい言葉はここぞというときに。紳士的にゆっくりと段階を踏んで』

それを遮るようにすぐに大きな声で悪魔がささやいた

『本気の気持ちを見せるには、行動しかない』と。












ちゃん…」












悪魔の声が聞こえた時点で 理性の負けは見えていた










「…愛してる」

の耳元で優しく囁くと、そのままぎゅっとを抱きしめる。
目をぎゅっと閉じたの全身に注がれる大地の想いをは受け止めて、
そして、そのまま2人の体温が一つになった。


その日を境には大地の言葉を全部本気と信じるようになったとか。




ーーーーーーーーーーーーーー
かっこいい大地先輩がかけなくてすいません・・・orz
想像するたびに大地は主人公と付き合うと、可愛いとか好きを微笑みながら連呼してる気がする。
そしてめちゃくちゃ甘やかすんだろうなと。
そんな妄想をとりあえず小説にしたらだんだんよくわからない方向へ(笑)
たまにはこんなのもありにしておきます(5/26/2016)



topページへ戻る